2016年5月アーカイブ

 5月3日は憲法記念日であり、5日は子どもの日である。経済大国であり、世界

有数の「豊かな日本」であるはずの我が国で、「子どもの貧困」が社会問題化して

いるので、憲法との関連も含めて一考してみました。

・・・「子どもの貧困」・・・一端・・・

   「食事は学校給食だけで夏休み明けには痩せて登校してくる小学生。」

 「ペット用のゲージに入れられ、ひもでつながれていた3歳の子ども。」

 「不安と緊張で暴力的になり、大人の目を盗んでは妹を攻撃してしまい、

          『ぼくは生まれ てこなければよかった。』と口にする4歳の子ども。

 「中学生・高校生女子の性被害の激増と差別」

   「大学生のブラックバイトと奨学金」


 ・・・「子どもの貧困率の現状」・・・

 2012年の厚生労働省の調査によると、17歳以下の子どもの貧困率は

16.3%となっています。これは子どもの6人に1人の割合であり、多くの子

どもが、毎日貧困に苦しんでいるのです。

   その理由の1つが、大人も含めた相対的貧困率の上昇です。相対的貧

困率とは可処分所得の中央値の半分、言わば一般的な所得の半分に満

たない世帯員の割合であり、2012年では所得が122万円以下の世帯員が

該当します。この相対的貧困率でみると、1985年には12%だった相対的

貧困率は、2012年には16.1%まで上昇しました。貧困にあえぐ家庭が激

増していると言っても過言ではありません。

  特に大人一人で子どもを養育している家庭が特に相対的貧困率が高く、

54.6%となっています。シングルファーザー・シングルマザーとして子どもを

養育している家庭が経済的に困窮し、子どもにも大きな影響を与えている

のが現状です。

  世界との比較で見えてくるもの国際比較を行うと日本の独自性がより強

く見えて来ます。先進国諸国といっても良いOECD加盟諸国の相対的貧困

率を比較すると、全34か国の中で6位と高位になっており貧富の差が激しい

国となっているのです。

  子どもの貧困率だけでもみるとやや順位が下がるものの9位と高位となっ

ており、果たして本当に「豊かな日本」であるのか疑問に思えてしまいます。

さらに驚愕することがあります。大人一人で子どもを育てている家庭で見る

と、データが存在しない韓国を除けばOECD1位の貧困率となっているので

す。ここにも格差社会の現状が明確に示されています。


・・・子どもの貧困が及ぼす未来の日本・・・

   日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った共同研究の結

果、「子どもの貧困」は日本経済に対しても、大きな損失を与えることとなる

と警告している。

 現在15歳の子どもの貧困を放置すれば、彼らの将来の就業は、正社員は

8.1万人、非正規社員3.6万人、無職4.8万人となると想定され、彼らによる経

済効果は約22.6兆円となると推定されています。

  しかし、放置するのではなくしっかりとした対応を行い、大学の進学率を上

昇させることで、正社員は9万人、非正規社員は3.3万人、無職は4.4万人に

減少して、彼らによる経済効果は約25.5兆円となり、2.9兆円もの経済効果が

増加するとの推定がなされています。

  経済効果が向上すれば税収も増えます。貧困を放置した場合は国の財政

負担額は約6.8兆円だが、しっかりとした対応を行うことで財政負担額は約5.7

兆円へ減少するのです。 財政的にも1.1兆円もの改善が行われるのです。

これはあくまで現在の15歳だけを対象にした調査であり、推定でしかないが、

18歳までの各年齢層全てを対象にするならば単純計算で18倍以上もの損失

額に膨れ上がっていきます。

  子どもの貧困を放置することは、子どもたちの将来だけでなく、日本の将来

経済の為にも看過できない問題として、経済対策としてしっかりと取り組んで

いかなければならない問題であると指摘しています。


・・・子どもの貧困と労働者派遣法の問題・・・

  前述した共同研究はなんと白々しいものでしょうか。貧困の原因は労働者派

遣法の制定と度重なる改悪にあることは明白です。それを提起し、制度化させ

た日経連に連なる側が研究報告とはいえ、経済損失を計算して対策をこうじる

ことにより経済効果が表れるなど言われても素直に受け入れることはできない

のは小生だけでしょうか。

  経済学的に紐解けば、労働力の再生産費である「賃金」を削減するための

派遣労働法であり、非正規労働者の賃金は「人件費」に含まれず「備品費」な

どと同様に枠づけられているとも言われているのです。労働者派遣法改悪など

の雇用破壊は、親の低賃金・不安定雇用を加速させ、子どもの貧困を拡大さ

せただけです。

  女性労働者の60%以上が非正規労働者との報告があり、シングルマザーは

パートを「掛け持ち」してやっと生活を維持しているとも言われています。冒頭に

例示してように食事も満足に与えられず、兄弟の面倒さえ見なければならないこ

んな状況に置かれたなら正常な育ちを望むべくもありません。母親は毎日の労

働で疲労困憊しており、子ども達の育ちに関心を払う余裕もありません。


・・・「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の現実・・・

  貧困問題解決に取り組む市民らの運動を背景に議員立法で13年に成立した

「子どもの貧困対策法」は、事態打開の第一歩となる法律です。貧困の基本概念

の定義をしていないなど不十分さはありますが、「貧困の状況にある子どもが健や

かに育成される」環境整備や「教育の機会均等を図る」ことを目的に掲げ、子ども

の貧困対策の総合的な策定、実施にたいする国・地方自治体の責務などを明記

しています。

  しかし、安倍政権は同法の具体化に真剣に取り組んできませんでした。同法が

政府に作成を義務付けた「対策大綱」の閣議決定(14年)は大幅に遅れたうえ、

その中身も実効性が乏しい従来型でした。

  関係者が強く求めた貧困率削減の「数値目標」の設定はされず、世界の多く

の国が採用している返済不要の「給付制奨学金」導入も見送られました。こんな

後ろ向きの姿勢では、事態を打開することはできません。

     「1億総活躍社会」対策のなかで一人親世帯支援を盛り込みましたが、不十分

な中身です。実効性ある「子どもの貧困対策」をつくるためにも「大綱」の見直し、

再検討も必要です。

  子ども貧困は簡単に解決できる問題ではなく、様々な社会福祉制度にもかか

わる問題です。その意味では安倍政権の福祉予算削減は許されず、具体的には

子どもの多い世帯ほど打撃となる生活保護費削減や同・寒冷地加算削減などに

より窮乏化を促進させました。

  その後もメール「保育園落ちた日本死ね」を発端にして解決を迫られた保育園

待機児童問題も保育士の過酷な勤務態様の改善や低賃金を抜本的に解決する

ことなく、入園枠や保育士資格の規制緩和という小手先の解決策で乗り切ろうと

しており、働く女性達の怒りをかっております。

 

・・・子どもの人権と憲法など・・・

 
   子どもの人権に関係する代表的な法律・宣言には、日本国憲法、児童福祉法、

児童憲章があります。

  <日本国憲法>「国民主権」、「平和主義(戦争放棄)」、「基本的人権の尊重」

を三本柱としている日本国憲法は、子どもの権利を考えるときに、何よりもまず確

認しなければならないものです。

 <・憲法第25条>(生存権(人間らしく生きる権利))。

 ① すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

   健康で文化的な最低限度の生活を営むのは、 国民の権利である事を謳っ

     ています.

 ② 国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上

      及び増進に努めなければならない。

    人間らしく生きる権利を保障するために、国は国民に対して責任を持ち、生

      活に深 く関わる社会福祉や社会保障、公衆衛生の向上に努める義務がある

      ことを謳っています。

 <・憲法第13条> (個人としての尊重・幸福追求権)

   「全て国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する 国

   民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、

   最大の尊重を必要とする。」

      この憲法第13条は、憲法第25条の「国は人間らしく生きる権利を保障するこ

   とに対して、全体的な国家ではなく、国民一人ひとりにおいては個人として「幸

  福追求権」をもっていて、且つ尊重されるということが謳われています。

     このように、日本国憲法第25条と日本国憲法第13条では、「国民は人間らし

   く、そして自分らしく生きる権利を有する。」ということが明確に謳われています。

      そして、これは大人と子どもの区別なく、全ての国民に関係していて、社会福

    祉を考える際の基本的な権利とされています。

 

   <児童福祉法> 児童福祉法は、1947年、昭和22年に制定されています。

    この法律が制定される前、つまり戦前は、天皇制国家おける「健兵健民」の

   育成思想による児童や育成がされていました。ですが、戦後の平和憲法では、

    児童の健全育成や福祉の増進である「児童福祉」の理念が前に立ち、子供達

    が健やかに育成されると位置づけられました。

 

  <・児童福祉法第1条>(児童福祉の理念)


   ① すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成される

    よう努めなければならない。「心身ともに健やかに育成される権利」が、明確に

    謳われています。

   ② すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなけばならない。

     「生活を保障され、愛護される権利」が、明確に謳われています。

     児童福祉法第一条の①も②も、大切な児童福祉の理念となっています。

    <第2条>(国、及び地方公共団体は児童育成の責任を負う事を明示して

          います。)

    <第3条>(「児童の権利」と「公的責任の明示」の2つを児童福祉の原理と

          し、尊重されなければならないという内容が歌われています。

 

   <児童憲章>1951年 児童憲章制定会議の決議を経て、宣言されました。

    われわれは、日本国憲法の精神に従い、児童に対する観念を確立し、全て

   の児童の幸福をはかるために、この憲章を定める。

     ・児童は、人として尊ばれる。

     ・児童は、社会の一員として重んぜられる。

     ・児童は、よい環境の中で育てられる。

 1、すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障

  される。

 2、すべての児童は、家庭で、正しい愛情と認識と技術をもって育てられ、家庭

  に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる。

 3、すべての児童は、適当な栄養と住居と被服が与えられ、また、疾病と災害

  から守られる。

 4、すべての児童は、個性と能力に応じて教育され、社会の一員としての責任

  を自主的に果すように、導かれる。

 5、すべての児童は、自然を愛し、科学と芸術を尊ぶように、みちびかれ、また

  道徳的心情が培わられる。

 6、すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整った教育の施設

  を用意される。

 7、すべての児童は、職業指導を受ける機会が与えられる。

 8、すべての児童は、その労働において、心身の発育が阻害されず、教育を

  受ける機会が失われず、また児童としての生活が妨げられないように、十分

  に保護される。

 9、すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、悪い環境から守られる。

10、すべての児童は、虐待、酷使、放任その他不当な取扱から守られる。

   あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。

11、すべての児童は、身体が不自由な場合、または精神の機能が不十分な場

   合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。

12、すべての児童は、愛と誠によって結ばれ、よい国民として人類の平和と文化

   に貢献するように、導かれる。

  このように児童憲章は、全ての児童の幸福を図るために、児童の基本的人権

 を社会全体が自覚、確認し、その実現に努力する目的でつくられた12か条の文

 章となっています。

  そして、児童憲章は、大人と同じように子どもも人間として尊ばれることを謳っ

 ていて、人間は生まれながらにして尊厳ある存在として位置づけています。

  児童憲章の本文では、家庭のあり方や児童の保護、児童に対する社会のあり

 方や教育を受ける権利、児童家庭福祉の目的などが挙げられています。

   この児童憲章は、国連の児童権利宣言(1959年)よりも前に作成されています。

   すべての児童の幸福を図り、その実現に努力することが最終目標となっている

  わが国の児童憲章は、とても意味深く、世界に誇ることが出来る美しい憲章であ

  ると言えるでしょう。

 

   「子どもの貧困」は、絶対に許されない!

   <人らしく育てて、共に人らしく暮らし、人らしく意見を述べる>

 子ども達に憲法を、子どもの人権を確立しよう!

   憲法改悪は許されない! 

       緊急事態条項は人権を剥奪するものだ!

  5月3日、憲法集会が札幌市大通公園で<戦争をさせない

北海道委員会>の主催で開催されました。主催者挨拶などで

は、夏の参議院選挙での争点にされている「憲法改正」を阻止

するための取り組みの強化を呼びかけました。

   呼びかけ人代表の結城洋一郎・小樽商大名誉教授は「平和

な民主主義を守り通し、全ての人々の尊厳を守り抜く社会の構

築を」とスピーチしました。その後、1200人の参加者は「憲法

護れ」「平和を守れ」などと声を挙げながら札幌駅前通りをデモ

行進しました。


 安倍首相は「憲法改正を参院選の公約に掲げて訴える」「在

任中に(改憲を)成し遂げたい」と明確に打ち出しています。改

憲の発議には衆参両院で3分の2の賛成が必要です。衆院は

改憲賛成派が既に3分の2を占めるから、焦点は参院です。

保法制に賛成した党は非改選121議席のうち86を占める

ので残りは76議席です。3年前の参院選より10議席少ない

結果で発議できることになります。

 憲法の価値はどこにあるのでしょうか。その第一の役目は何

なのか。改めてこの機会に考えてみます。

 安倍政権は当初、憲法改正の要件を定める憲法96条を改

定しようとして失敗しました。すると次に憲法解釈を変え、閣議

決定により集団的自衛権の行使を可能にしました。海外派兵で

きるようにし、日本が攻撃されたわけでないのに参戦できるよう

にしたのです。

 今度は解釈改憲でなく、本格的に憲法の条文を変えようとい

う方針です。首相らはその突破口に緊急事態条項を位置付け

ているのです。

 { 緊急事態条項は、地方自治を否定する! }

 自民党の憲法改正草案98条によると、国会の事前同意がな

くても、閣議だけで首相は緊急事態宣言を出すことができます。

すると内閣は、法律と同じ効力を持つ政令を制定することがで

きます。国会は唯一の立法機関ですが、内閣が立法権を国会

から奪うのです。

 草案は「地方自治体の長に必要な指示を出すことができる」

とも定めています。ドイツの例を思い出します。

 ナチスは政権を握った途端、地方への命令権を駆使し、首長

を罷免するなどして地方政府を次々に掌握しました。今なら沖

縄において、県民の総意に基づいて辺野古新基地建設に反

対する翁長雄志知事を一方的に罷免するようなものです。

 自民党の草案には「何人も国の指示に従わなければならな

い」ともあるから、国民は絶対服従を強いられます。基本的人

権については「保障」が解除され、「尊重」に格下げされます。

政府は「人権侵害をしてはならない」という禁止から解放され、

「尊重するけど、どうしても必要なら人権侵害してもいい」こと

になります。

 安倍首相は「緊急事態に関する(規定は)諸外国で多くの例

がある」と強弁しています。しかし、米国では議会招集権限を

持たない大統領が招集できるとする程度です。。ドイツも州議

会から連邦議会に権限を移す程度です。立法権を政府が一

方的に握るわけではありません。立法権を持つとする国も期

限や制約があるのが普通です。だが自民党の草案は制約が

なく、何回でも更新できるから事実上無期限に万能の権力を

振るえるのです。危険なことおびただしいのです。

 

 { 緊急事態条項は、基本的人権を制限し、

                 国民を束縛する! }

 言うまでもなく憲法の意義は政治権力者を縛ることにあるの

です。それが立憲主義です。だが「国民は公益及び公の秩序

に反してはならない」と定めるように、自民党の改憲草案は明

らかに政府を縛るより国民を縛る方向を志向しているのです。

 沖縄の戦後史を想起すると、米国の施政権下では、沖縄の

人々の基本的人権は制限され続けました。

 米国の高等弁務官は万能の権力者だったのです。立法院の

立法も高等弁務官が恣意(しい)的に拒否できました。沖縄の

人々は、琉球政府の主席を選挙で選ぶことすら許されなかっ

たのです。

 米国は沖縄の人に何ら諮ることなく、布令一つで沖縄側の権

利を剥奪できました。代表例が1953年の土地収用令です。小

禄村具志、伊江村真謝・西崎、宜野湾村伊佐浜(いずれも当時)

などの民間地を次々に接収し、基地を造成しました。反対する住

民は「銃剣とブルドーザー」で強制的に排除したのです。

 米軍に不都合な出版物は弾圧されました。大学や高校の文芸

誌や小学校のPTA通信までが検閲の対象だったのです。米軍

の軍用地料一括払い反対の集会に参加しただけで、大学生は

大学を退学させられたのです。

 政府が万能の権力を握るとどうなるかは沖縄の歴史が証明し

ているのです。人権の「保障」無き改憲は断じて許してはなりま

せん。

 安倍首相は、緊急事態条項の必要性について「自然災害へ

の対処」を理由に挙げていましたが、熊本震災への対処を投

げて「サミットの準備」と称して外遊しました。これほどご都合

主義が明白になったことはありません。


 「緊急事態条項」は必要ない。

 改憲阻止、「戦争法」廃止!